骨や組織を破壊する真珠腫性中耳炎
鼓膜が一部内側にへこみ、そこに耳垢などが溜まって真珠腫(真珠のようなかたまり)を形成し、中耳の耳小骨、半規管、顔面神経を圧迫するのが真珠腫性中耳炎です。圧迫が強まると、骨などの組織を破壊するまでに至ります。また、放置してしまうと、髄膜炎などの重い合併症を引き起こす原因となります。
真珠腫性中耳炎の原因
中耳の炎症であったり、形態不全や耳管機能不全による、中耳の換気の不良を主な原因とします。外耳と中耳の気圧差によって鼓膜が内側にへこみ、耳垢が溜まって真珠腫を形成します。
真珠腫性中耳炎の症状
- 難聴
- めまい
- 顔面神経麻痺
- 耳の痛み
真珠腫が大きくなり、中耳内の組織を圧迫することで、上記のような症状をきたします。
真珠腫性中耳炎の検査
問診の上、鼓膜を観察すれば診断が可能です。
顕微鏡検査、聴力検査、細菌検査、耳管機能検査、内視鏡検査、CT検査などを行い診断します。
真珠腫性中耳炎の治療
鼓室形成術による治療が行われます。設備の整った手術室で、院長が執刀いたします。
真珠腫性中耳炎の手術
鼓室形成術による治療が行われます。
設備の整った手術室で、院長が執刀いたします。
鼓室形成術(+乳突削開術)
真珠腫を取り除いた上で中耳をきれいに清掃します。
加えて、真珠腫の再形成を防ぐため、へこんでしまった鼓膜と耳小骨の再建を行い、音が正しく伝わるようにします。
耳管機能の障害程度によって、作成した鼓膜にチューブを留置したり、耳管に耳管ピンの留置を併用することもあります。
真珠腫性中耳炎の程度によって、乳突部の開放・清掃のための乳突削開術も付随します。
手術名 | 手術時間 (執刀のみ、 準備時間除く) |
手術可能 年齢 |
術前検査 | 術後休学・休職期間 (術日1日目) |
生活制限期間 (運動・飲酒) (術日1日目) |
術後診察間隔 (術日起算、順調な場合) |
---|---|---|---|---|---|---|
鼓室形成術 (+乳突削開術) |
2~4時間 | 16歳〜 | 採血、心電図、 持病コントロール |
2日間推奨 | 2日間推奨 | 翌日、2週間後、 1ヶ月後、2ヶ月後、 3ヶ月後、以降症例 |
※横スクロールで全体を表示
真珠腫性中耳炎の手術費用
手術名 | 3割 | 1割 |
---|---|---|
鼓室形成術(耳小骨温存術) | 103,980円 | 34,660円 |
鼓室形成術(耳小骨再建術) | 153,990円 | 51,330円 |
乳突削開術 | 36,740円 | 12,250円 |
- 手術費用のみの負担額です。上記に手術費用に、再診料・薬剤費などが加算されます。
- キャッシュレス決済可能
クレジットカード(VISA・Master・JCB・AMEX・DIN)でのお支払いが可能です。
真珠腫性中耳炎解説動画
真珠腫性中耳炎Q&A
真珠腫性中耳炎は手術なしでは治らないのですか?
先天性真珠腫(鼓膜に穴は開いていない生まれながらの真珠腫で、子供時代に見つかることが多い)の一部では自然に真珠腫が消えて治ることもあります。消えて治る、消えずに残る違いがどこにあるかは解っていません。
また、鼓膜や外耳道皮膚の自浄作用(migration)は、正常では耳垢やゴミなどの異物の清掃や排泄、またケガなどで開いた鼓膜の穴の自然治癒に関わっています。自浄作用が悪いことが真珠腫の悪化や、鼓膜に開いた穴が自然に治らない要因とも言われています。
・溜まった真珠腫が耳の外に出るようになる(自浄作用が良くなる)。
・鼓膜に開いた穴が閉じる(乾燥した鼓膜と外耳道になる)。
これら両方が満たされた状態となれば、感染など悪化要因も少なくなり病状が安定するため、手術せず経過を追って診ていくことも可能(現状維持の状態)です。しかし真珠腫で悪くなった聞こえが手術せず自然に良くなることはありません。
真珠腫性中耳炎は手術の後遺症は何がありますか?
以下、起きる可能性は低い事柄です。
・顔面神経麻痺 顔の表情筋が動かなくなる
・めまい 回転するめまい
・聴力障害 手術前よりも、さらに聞こえなくなる
・耳鳴り 手術前になかった耳鳴りが生じる
・味覚障害 手術した側の舌の味がなくなる
・術後感染症 術後に細菌が感染する
・中耳炎の再発 中耳炎や真珠腫が再発したり再度鼓膜に穴があいたりする
・耳介の痺れ 耳介上方に触覚がない部分がある
真珠腫性中耳炎の方がしてはいけないことは?
・耳漏や難聴など症状が悪化しているが受診しない。
・鼻をよくすする。
・耳掃除や綿棒などを入れる、など自分で耳の中を触る。
真珠腫性中耳炎は何人に一人の割合で発症しますか?
6,452~31,250人に一人(10万人あたり3.2〜15.5人)と言われています。
真珠腫性中耳炎を放置するとどうなりますか?
めまい、聴力悪化、耳漏悪化、耳鳴り、味覚障害、顔面神経麻痺、髄膜炎といった症状が起こる可能性があります。
真珠腫性中耳炎と難聴は関係がありますか?
難聴になります。真珠腫は中耳(鼓膜の奥)で周囲の組織を破壊して進行する病気です。鼓膜に穴が開き、音を伝える耳小骨を破壊し難聴が悪化します。進行した場合、内耳も破壊され治せない難聴になります。